楽天市場から自社ECへ移すとき、最初に効いてくるのは手数料の差ではありません。契約とデータの条件です。契約期間は12ヶ月で自動更新のため、動く順序を間違えると1年分の出店料が余計に残ります。
顧客の連絡先も、退店のときに持ち出せるものではありません。楽天市場は顧客のメールアドレスを暗号化して店舗へ渡す仕組みで、店舗が実際のアドレスを参照できないと公式に説明しています。
この記事では公式の料金表で費用の作りを比べ、商品と受注のデータをどこまで持ち出せるか、検索からの流入がどう扱われるか、退店の手続きで何が消えるかを順に整理します。
楽天市場以外のサービスからの移行も見比べたい場合は、主要サービスを横断して比較したガイドで費用やデータ移行のしやすさを確認できます。
この記事の要点
- 顧客のメールアドレスは暗号化して店舗へ渡されるため、出店している間も実際のアドレスは手元に無い
- 受注データのCSVダウンロードは無料だが、メールアドレスはマスク化された状態で出力される
- 商品データのCSVは月額10,000円(税別)のRMS商品一括編集機能が前提で、申込後は使わなくても課金される
- 退店すると商品データも顧客データも消去され、退店日と同時に利用中のサービスも自動で解約される
- 楽天市場の契約期間は12ヶ月で自動更新。途中退店はできるが契約期間分の出店料の支払いは必要になる
- ShopifyのURLリダイレクトは転送元が自分のストアのリンク切れURLに限られ、楽天のURLを転送元にはできない
楽天市場とShopifyの違いは費用の作りと連携の現状
楽天市場はすでに買い手がいる場所を借りる形で、Shopifyは自分の店を建てる形です。移行を決める前に確かめたいのは、売上から引かれるものの本数と、そもそも併用できるのかどうかの2点になります。
楽天市場の費用は月額と付帯手数料の積み上げ
楽天市場の費用は月額出店料だけでは終わりません。プランごとの月額に、売上へ比例する手数料が何本も乗る作りです。
| プラン | 月額出店料(税別) | 登録できる商品数 | システム利用料(パソコン) | システム利用料(モバイル) |
|---|---|---|---|---|
| がんばれ!プラン | 25,000円 | 10,000商品まで | 3.5〜6.5% | 4.0〜7.0% |
| スタンダードプラン | 65,000円 | 50,000商品まで | 2.0〜4.0% | 2.5〜4.5% |
| メガショッププラン | 130,000円 | 無制限(初期値20万商品) | 2.0〜4.0% | 2.5〜4.5% |
契約期間はどのプランも1年です。がんばれ!プランは年間一括払、ほかの2つは半年ごとの2回分割払になります。
初年度だけは10回分割払を選べる場合もあります。その場合の月額出店料はがんばれ!プランが28,000円、スタンダードプランが70,000円です。2年目からは半年ごとの2回分割払に戻ります。
この月額とは別に、全プランへ共通してかかるものがあります。
| 全プラン共通でかかるもの | 率または金額(税別) |
|---|---|
| 初期登録費用 | 60,000円 |
| 楽天ポイント負担 | 楽天会員の購入代金の税抜額×付与率(通常1.0%) |
| 楽天スーパーアフィリエイト | アフィリエイト経由の売上の2.6〜5.2% |
| 取引の安全性・利便性向上のためのシステム利用料 | 月間売上高の0.1% |
| 楽天ペイ(楽天市場決済)の利用料 | 月間決済高の2.5〜3.5% |
| 問い合わせ管理ツール(R-Messe) | がんばれ!プラン3,000円/ほかの2プラン5,000円(無料期間中) |
出典:楽天市場公式の出店プランのページと、よくある質問の分割払いについての回答。金額はすべて税別です。
アフィリエイト費用は成果報酬とシステム利用料の二段になっている
上の表の2.6〜5.2%は、1つの料率ではありません。楽天市場の料金詳細のページを開くと、費用が二段に分かれていることが分かります。
一段目はパートナーへ渡す成果報酬で、商品ジャンルごとに2.0〜4.0%です。報酬には1商品1個の売上につき1,000円という上限があります。
二段目は、その成果報酬の合計に対してかかるシステム利用料です。料率は成果報酬が少ないほど高くなります。
| パートナーへの成果報酬の合計 | システム利用料の料率 |
|---|---|
| 0〜30万円 | 30% |
| 30万円超〜100万円 | 25% |
| 100万円超〜500万円 | 23% |
| 500万円超〜1,000万円 | 20% |
| 1,000万円超 | 15% |
表の5つの区分でいちばん高い30%が当たるのは、成果報酬の合計が30万円までの店舗です。アフィリエイト経由の売上が小さいうちは、この区分に入ります。上の表にある2.6〜5.2%という帯は、ジャンル別料率に30%を上乗せした数字と一致します。
出典:楽天市場公式のサービス・料金詳細の、楽天スーパーアフィリエイトの項。
Shopifyの費用はプランの月額と決済まわりの手数料
Shopify側の作りはこれよりも単純です。プランごとの月額と、オンラインのカード決済手数料が基本になります。ここにもう1つ、Shopifyペイメント以外の決済サービスを使ったときの外部サービスの取引手数料が加わります。
| プラン | 月払 | 年払(1か月あたり) | オンラインの標準カード決済手数料 | オンラインの海外カード決済手数料 |
|---|---|---|---|---|
| Basic | 4,850円 | 3,650円 | 3.55% | 3.9% |
| Grow | 13,500円 | 10,100円 | 3.4% | 3.85% |
| Advanced | 58,500円 | 44,000円 | 3.25% | 3.8% |
出典:Shopify公式の料金ページ。
並べると本数が違います。楽天市場は月額出店料のほかにシステム利用料・ポイント負担・アフィリエイト・楽天ペイ(楽天市場決済)の利用料が売上へ比例して乗ります。Shopify側で売上に比例して乗るのは、Shopifyペイメントを使うかぎりカード決済手数料が基本になります。
楽天市場の販売チャネルは今インストールできない
楽天市場とShopifyを両方動かす前提で考えている場合、その前提から確かめる必要があります。Shopify公式が案内してきた楽天市場の販売チャネルは、アプリページを開いても導入画面に到達できません。
アプリページには「このアプリは現在Shopify App Storeで提供されていません」と表示され、問い合わせ先としてByward Labsが案内されます。開発元は楽天自身ではありません。
つまり、連携しながら少しずつ移すという進め方は、これから始める店舗には選べません。移行の設計は、商品データをCSVで出して入れる形が出発点になります。
出典:Shopify App Storeの楽天市場アプリのページ。
連携が使えた時期もできることには線が引かれていた
この連携を惜しむ必要があるかどうかは、何ができたかを見ると判断できます。Shopify公式の案内では、楽天市場に既に登録済みの商品をShopifyへ自動で同期することはできませんでした。
在庫の連動も、Shopifyを通して作成した商品だけが対象です。移行を目的にした店舗にとっては、最初から片道の道具でした。
顧客のメールアドレスの取得もできないと明記されています。ページの構築やメール配信などの機能は、引き続きRMS側での操作が必要と説明されていました。
この連携を使う場合も、商品一括編集機能の申込が必須と同じページに書かれています。連携を使うかどうかに関わらず、月額の有料オプションが前提になる作りです。
出典:Shopify公式ブログの楽天市場販売チャネルの解説。
連携を続けたい場合に残る道
販売チャネルが使えなくても、楽天市場と自社ECを並行して動かす道が消えたわけではありません。ただし公式の回答は、費用と開発が別途かかる可能性を明示しています。
楽天市場のよくある質問は、他モールや自社サイトとの連携について「各種連携手法を用いて商品情報・在庫情報・注文情報などを連携する事が可能」と回答しています。同時に「RMSオプション利用や別途費用・開発が必要となる場合がございます」とも書かれています。
つまり、在庫や受注をまとめる仕組みは自分で用意する前提です。両方を動かす計画なら、その見積もりを移行の判断材料に入れてください。
出典:楽天市場公式のよくある質問の、他サイトとのシステム連携についての回答。
率の差は損ではなく集客を買っている代金
楽天市場の手数料が厚いことは、そのまま損を意味しません。楽天市場には最初から買い手がいて、その集客を借りる代金が率に含まれています。
Shopify公式もモールと自社ECの比較で同じ整理をしています。モールは集客力が高い一方、顧客データへのアクセスが制限されると説明しています。
自社ECへ移して浮くのは手数料の分です。集客の費用は別に立てることになります。
判断の材料は、いまの受注が楽天市場の中の検索から来ているのか、店名や商品名の指名で来ているのかの内訳です。モール内の検索から来ていた分は、退店と同時に失われます。楽天市場の中の導線なので、そのまま持ち出せるものではありません。
手数料が下がっても、モール内の検索で来ていた分を埋め直す期間の売上は別に立ててください。この内訳を数える前に退店の日程を決めると、売上の落ち方を見誤ります。
データを出して入れるまでの移行の手順
作業の順序を先に決めてください。楽天市場は退店するとデータが戻らないため、書き出しと退店の手続きを逆にすると取り返しがつきません。
- Shopifyのストアを作る日と、CSVを整える担当と、テスト取り込みの日を決める
- この3つが決まってから、楽天市場のRMS商品一括編集機能を申し込む
- RMSから商品データをCSVで書き出す
- 受注データのCSVを無料のダウンロードサービスで書き出す
- Shopifyの取り込み形式に合わせて列を対応づけ、文字コードと改行コードを整える
- まず少数の商品だけをテスト取り込みする
- 価格と在庫と画像を確かめてから商品の全件を取り込み、過去の注文は移行アプリかAPIで入れる
- 顧客の連絡先は持ち出せないため、Shopify側で会員登録を新しく集める導線を作る
- 取り込みの確認が終わってから、退店の書面連絡に進む
商品データのCSV一括編集は月額のオプション契約
楽天市場で商品データをCSVでまとめて出し入れするには、RMS商品一括編集機能の申込が前提になります。楽天市場の料金詳細のページは、この機能を月額固定費10,000円(税別)と案内しています。
方式も同じページに書かれています。商品データのCSVファイルをFTPでRMSにアップロードすることで、商品ページを一括して編集、登録、削除できるサービスです。
申込のタイミングには注意が要ります。同ページは「お申込後の基本料金(月額)はご利用の有無にかかわらず発生いたします」と明記しています。準備が整ってから申し込んでください。
申込はRMSのメインメニューから、店舗様向け情報・サービス、オプション機能利用申込・解約、CSV商品一括編集の順に進みます。
出典:楽天市場公式のサービス・料金詳細のオプション利用料の項と、楽天運営の店舗支援サイトの解説。
これとは別に無料で商品データを取り出す手段があるかどうかは、公式のオプション一覧には載っていません。見積もりでは有料オプションの月額を前提に置いてください。
受注データのCSVは無料で落とせるがメールアドレスは出ない
商品データと違い、受注データの書き出しは無料です。楽天市場の料金詳細のページに、CSVデータダウンロードサービスが無料として載っています。
用途も同じページにあります。受注管理機能からのデータ抽出に使うものです。自社の販売管理システムとの連動や、配送伝票の印刷が例として挙がっています。
ここに移行で効く注記が1行あります。「メールアドレスはマスク化(*****@pc.fw.rakuten.ne.jp)して提供いたします」と書かれています。
つまり受注CSVを全件落としても、そこに並ぶのは楽天のドメインに置き換えられたアドレスです。自社ECへ案内するメールを送る先としては使えません。
それでも落とす価値はあります。取引の履歴は、移行後の在庫計画や再購入の見込みを立てる材料になります。
出典:楽天市場公式のサービス・料金詳細の、CSVデータダウンロードサービスの項。
Shopifyへ入れる前に整える形式の決まり
書き出したCSVはそのままでは取り込めません。Shopify側の取り込みには形式の決まりがあり、先に知っておくと整え直しの二度手間が減ります。
| 項目 | 決まり |
|---|---|
| 文字コード | UTF-8 で保存する |
| 改行コード | LF を使う |
| 1行目 | 列ヘッダーにする |
| 商品CSVのサイズ | 15MBを超えられない |
| 商品のオプション | 1商品に最大3つまで |
| 商品画像 | 1商品に最大250件 |
画像の扱いには前提が1つあります。ShopifyはインポートのときにURLから画像をダウンロードし、自分のストアへ再アップロードする作りです。そのため画像のURLは一般公開されている必要があります。
1商品に複数の画像を載せる場合は、行の作り方まで決まっています。Shopify公式の指示は、画像ごとに1つの行だけを使うこと。
2枚目からは新しい行を挿入し、Handleを貼り付けた上で、その行に画像のURLを1つ入れます。1つの欄にURLを並べて書く形は使えません。
つまり1商品につき、画像の枚数だけ行が増えます。画像の多い店舗ほどCSVの行数は膨らむので、取り込み前に行数を数えて分割の要否を判断してください。
商品の識別に使うのはHandleという列。商品ページのURLに使われる固有のIDで、後からURLを設計するときの起点になります。
出典:Shopify公式の商品CSVインポートの文字コードと複数画像を追加する手順と、商品のインポートのファイルサイズの上限。
取り込んだ文字が崩れたときに見る場所
商品を取り込んだ後、商品説明の文字が読めない記号に化けることがあります。原因の見当は公式に書かれていて、CSVファイルがUTF-8になっていないことだと説明されています。
直し方も同じ案内の中にあります。ファイルをテキストエディタで開き、UTF-8を指定して保存し直します。表計算ソフトで保存し直しても、保存の設定次第では同じ結果になるため、文字コードを明示できる方法で保存するのが確実です。
崩れた状態のまま全件を取り込むと、修正は商品ごとの手作業になります。少ない件数で試す段階で、日本語の商品名と説明が正しく表示されるかを必ず見てください。
出典:Shopify公式のインポートでよくある問題の、商品説明に不自然な文字が表示される場合の項目。
取り込みは商品と顧客と過去の注文の順で行う
取り込む順番はShopify公式が指定しています。まず商品をインポートし、次に顧客、その後に過去の注文をインポートしてくださいと案内されています。
理由は参照の向きです。注文は商品と顧客を指すため、先に受け皿が無いと結びつきません。
ただし楽天市場からの移行では、顧客の段に入れるデータがありません。顧客の連絡先は店舗に渡っていないため、実際に取り込むのは商品と過去の注文の2つです。
過去の注文だけは方法が別です。CSVでの取り込み手順は用意されておらず、移行アプリ、Order API、Transaction APIが手段として案内されています。
移行アプリの探し先は Shopify App Store です。たとえばMatrixifyのアプリページは、商品、顧客、注文、リダイレクトなどを扱えると記載しています。
出典:Shopify公式のShopifyへの移行のガイドと、Shopify App StoreのMatrixifyのページ。
少ない件数で試してから全件を入れる
最初から全件を流さないでください。列の対応づけの間違いは、少数の商品を入れた時点でほぼ全部が表に出ます。
確かめる箇所は決まっています。価格の桁、在庫数、バリエーションの並び、画像が実際に表示されるかの4点です。
問題が無ければ、同じCSVの作り方で全件を流します。1回目のファイルを残しておくと、差分を追いやすくなります。
移せるデータと移せないデータ
移行の設計は、この線引きから始まります。移せないものを先に把握しないと、切り替えの直前で行き詰まります。
移せるものと移せないものの一覧
| データ | 移せるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 商品情報 | 移せる(CSV) | 楽天市場は有料オプション経由・Shopifyは商品CSVインポート |
| 商品画像 | 移せる(URLを書くとShopifyが取り込む) | 1商品に最大250件・URLは一般公開が必要 |
| 受注の履歴 | 楽天側から無料で書き出せる | CSVデータダウンロードサービス |
| 顧客の実際のメールアドレス | そもそも店舗に開示されていない | 暗号化して提供と楽天市場公式が明記 |
| 顧客の連絡先 | 退店時には取り出せない | 退店時に顧客データの抽出は行っていないと公式が明記 |
| 顧客のパスワード | 移せない | Shopify公式が明記 |
| 顧客の利用合計額・注文合計数 | 顧客CSVでは移らない | Shopify公式が明記 |
| 過去の注文 | CSVでは移せない(アプリかAPI) | Shopify公式が移行アプリとAPIを案内 |
楽天市場側の出典:サービス・料金詳細の商品一括編集と受注CSVの項、楽天あんしんメルアドサービス、契約における重要事項の退店時の欄。Shopify側の出典:商品CSVインポート、顧客のインポート、Shopifyへの移行のガイド。
顧客のメールアドレスは出店している間も店舗に渡っていない
顧客のメールアドレスは、退店のときに失うものではありません。最初から店舗の手元に無いものです。
楽天市場が持っているのは、楽天あんしんメルアドサービスという仕組みです。買い物のときに顧客のメールアドレスは暗号化された状態でショップへ提供され、ショップからは実際のアドレスを参照できないと説明されています。
料金詳細のページの注記も同じ趣旨です。受注データのCSVでは、メールアドレスがマスク化されて提供されると書かれています。
透明性の取り組みのページはさらに踏み込んでいます。クレジットカード情報とメールアドレスは、プライバシー保護と信頼性向上の観点から店舗様に開示は行っていないと明記されています。
つまり、3つの公式ページが同じ結論です。移行の計画は「顧客リストを持ち出す」ではなく「顧客リストをゼロから作る」という前提で組んでください。
出典:楽天市場のヘルプの楽天あんしんメルアドサービス、サービス・料金詳細のCSVデータダウンロードサービスの注記、透明性及び公平性の向上に関する取り組みのページ。
顧客データは退店すると戻らない
退店の側の条件も確かめておきます。楽天市場の契約における重要事項には、退店後は商品データや顧客データはすべて消去する、と書かれています。
再出店のときにも使えず、退店時に顧客データの抽出は行っていないとも明記されています。抽出の依頼を出す先そのものが無いということです。
連携チャネルを使っていた場合も事情は同じでした。Shopify公式は、この連携で顧客のメールアドレスを取得することはできないと説明しています。
手元に顧客の連絡先が1件も残らない前提で、移行後の売上の作り方を組んでください。
出典:楽天市場公式の契約における重要事項の顧客情報の取り扱い(退店時)の欄と、Shopify公式ブログの楽天市場販売チャネルの解説。
楽天市場で集めた顧客情報は自社サイトの広告に使えない
顧客情報の扱いには、もう1つ制限があります。楽天市場で集めた顧客情報に自社サイトの広告を行うことは、公式に禁止されています。
第三者への提供にも線が引かれています。店舗が使えるデータは、決済や配送の業務を委託する場合に必要な範囲を除いて、第三者に漏洩、開示、提供することができないと説明されています。
移行の支援を外部へ依頼するときも、この線を先に確認してください。受注データを丸ごと渡す形は、委託の必要な範囲を超えることがあります。
出典:楽天市場公式の契約における重要事項の顧客情報の取り扱いの欄と、透明性及び公平性の向上に関する取り組みのページの、店舗様及び第三者によるデータの利用の項。
公式に明記が無いのでこの記事で断定しないもの
楽天市場のレビュー、累計の販売実績、店舗ランキングが移行や退店でどう扱われるかは、公式のページに明記がありません。楽天ポイントと楽天会員IDの扱いも同じです。
退店の書面連絡の様式と提出先も確認できていません。出店の案内ページに書面による連絡とあるだけで、出店規約の本文そのものが公開されていないためです。
楽天市場側で301リダイレクトを設定できるかどうかも、明記したページが見つかりません。
公式の文言が無いものを、ここでは断定しません。契約や退店の前に、楽天市場の担当者へ直接確認してください。
検索からの流入は引き継げない前提で組む
サイトを引っ越すときの定石は、古いURLから新しいURLへ301リダイレクトを設定することです。モールからの移行では、この定石が最初の一歩でつまずきます。
ShopifyのURLリダイレクトは転送元が自分のストアに限られる
Shopifyにもリダイレクトの機能はあります。ただし、作れるのは自分のストアのリンク切れURLからのものだけです。
公式ヘルプは条件をこう書いています。リダイレクトできるのはリンク切れのURLからのみで、そのURLではページやページタイトルに404などのエラーメッセージが表示される、という説明です。
転送先は外部のドメインも指定できます。自分のドメインの中なら相対URL、外へ出すなら完全なURLを使う形です。件数の上限は最大100,000件で、Plusでは20,000,000件まで作れます。
整理すると、転送元にできるURLの範囲が決まっています。転送先は外部のドメインでも構いませんが、楽天のような外部のURLを転送元に指定することはできません。
モールの店舗ページは自分のドメインではない
楽天市場の店舗ページと商品ページは、楽天のドメインの下にあります。店舗ページはrakuten.co.jpの配下、商品ページはitem.rakuten.co.jpの配下という作りです。
Google検索セントラルは、URLが変わる移転についてサーバー側で301リダイレクトを設定する手順を案内しています。設定できない場合の最終手段としてクライアント側のリダイレクトにも触れています。
どちらの手も、自分が設定を触れるサーバー上のURLが前提です。楽天のドメイン配下のURLに301を設定する機能は、少なくともShopify側には用意されていません。
楽天市場の店舗ページが集めていた検索の評価は、新しい自社ECへ引き継げないものとして計画を立ててください。
引き継げない前提で退店の前にできること
評価が引き継げないなら、退店の前に自社ECを立ち上げて時間を稼ぐ形が現実的です。並行して動かす期間に、検索とSNSからの入口を作っておきます。
商品ページのURLは移行の前に決めてください。ShopifyはHandleの列をURLに使うため、CSVを作る段階で設計しておくと後から直す手間が消えます。
楽天市場の店舗ページから自社ECへ誘導する形は、規約の確認が先です。顧客情報の転用が禁止されている以上、案内の方法にも制限がかかると考えてください。
移行後の決済と集客の作り直し
楽天市場では決済処理を楽天市場が代行していました。自社ECへ移ると、この部分は自分で組み立てることになります。
楽天ペイはShopifyの標準では使えない
楽天市場の買い物に慣れた顧客のために、楽天ペイを残したいという相談はよくあります。Shopifyペイメントの決済手段の一覧には、楽天ペイの記載がありません。
日本のShopifyペイメントで使えるカードは、American Express、JCB、Mastercard、Visaです。ウォレットはApple Pay、Google Pay、Shop Payが挙げられています。
楽天ペイを足す道はゼロではありません。Shopify App StoreにはSBペイメントサービスが提供する楽天ペイ決済のアプリが並んでいます。
ただし無条件ではありません。アプリのページは、利用にはSBペイメントサービスとの契約が必要と書いています。アプリ本体が無料でも、決済代行との契約が別に要るということです。
見落としやすいのは、契約とは別にShopify側の請求が1つ増える点です。Shopifyペイメント以外の決済サービスで代金を受け取ると、その注文には外部サービスの取引手数料が請求されます。楽天ペイをアプリで足すという判断は、決済代行の手数料とこの取引手数料の両方を引き受ける判断になります。
反対に、Shopifyペイメントで処理した注文にはこの取引手数料は請求されないと公式が明記しています。率は料金プランによって変わるとだけ書かれていて、公式のこのページに具体的な数字はありません。
出典:Shopify公式の日本のShopifyペイメントの決済手段の対応一覧と、Shopify App Storeの楽天ペイ決済アプリのページの利用条件。取引手数料はShopify公式の外部サービスの取引手数料の、請求される場合の説明によります。
メール配信は許諾の取り直しから始まる
顧客の連絡先が引き継げないため、メールの受け皿もゼロからです。Shopifyの顧客CSVには、メール配信の許諾を表す列があります。
この列の値はyesかnoの2つだけです。公式ヘルプは、マーケティングメールは受信をオプトインした顧客にだけ送るよう案内しています。
パスワードも同じ扱いです。Shopifyの外部で暗号化されているため、CSVで別のオンラインストアから移行することはできないと明記されています。
移行の直後は、既存の顧客が新しいストアで会員登録をやり直す形になります。案内の文面と、登録の手間に見合う特典を先に用意してください。
楽天市場で使っていた機能とその料金を並べる
移行の見積もりでは、楽天市場側で使っていた機能を数え忘れがちです。料金詳細のページから主なものを抜き出すと、無料と書かれたサービスもいくつか並んでいます。
| 楽天市場のサービス | 料金(税別) |
|---|---|
| CSVデータダウンロードサービス | 無料 |
| R-Cabinet(画像・動画管理) | 無料 |
| 楽天GOLD(HTMLスペース) | 無料(初期100MB・最大1GB) |
| R-Mail(メール配信) | 基本料無料+1通1円 |
| RMS商品一括編集機能 | 月額10,000円 |
出典:楽天市場公式のサービス・料金詳細の、オプションサービス利用料金の項。
移行・退店でつまずく注意点
手が止まりやすいのは取り込みの作業です。ただし取り返しがつかないのは、契約と順序の側にあります。
契約期間は12ヶ月で書面の連絡が無ければ自動更新される
契約期間は利用開始日から12ヶ月です。1ヶ月前までに書面による連絡がない限り、自動で更新されます。
課金の起点にも注意が要ります。基本出店料とシステム利用料の課金が始まるのは店舗のオープン日ではなく、利用開始日です。
書面の様式と提出先は公式のページに明記がありません。退店を決めたら、1ヶ月前の期限に間に合うよう楽天市場の担当者へ早めに確認してください。
出典:楽天市場公式の契約における重要事項の、利用開始日と契約期間の欄。
途中退店はできるが契約期間分の出店料は残る
公式のよくある質問は、契約期間中の途中退店は可能だと回答しています。ただし1年間の契約のため、途中退店の場合でも当初の契約期間の出店料の支払いは必要です。
退店を早めても出店料そのものは減りません。一方で売上が無くなれば売上に比例する手数料は発生しません。
第三者の解説には、課金開始から1年間は退店できないと書いたものもあります。公式の回答は途中退店が可能というものなので、判断は公式の記載に合わせてください。
出典:楽天市場公式のよくある質問の、途中退店についての回答。
退店の日に使っているサービスも同時に止まる
オプションの解約手続きを別に出す必要はありません。楽天の店舗向けよくある質問は、退店申請を行った場合、退店日と同時に利用中のサービスも自動的に解約となると回答しています。
便利に見えますが、裏返すと期限です。商品データのCSVを落とせるのは退店日までで、それを過ぎると機能そのものが使えません。
同じ回答には補足もあります。制作企業へ依頼している制作途中のページなどは個別の確認が必要とされています。外部へ制作を頼んでいる場合は、退店日を伝える相手に含めてください。
出典:楽天公式の店舗向けよくある質問の、退店申請時のサービス解約についての回答。
商品データを出し終える前に退店の連絡をしない
順序の中でいちばん戻せないのがここです。退店すると商品データも顧客データも消去されるため、退店の連絡より前に商品データの書き出しを終えてください。
確認の猶予も見ておきます。書き出したCSVがShopifyで問題なく取り込めるところまで確かめてから、退店の手続きに進んでください。
受注データのCSVも同じです。無料で落とせるからと後回しにすると、退店日を過ぎた時点で取り出す手段が消えます。
オプションを申し込む月をずらさない
商品一括編集の月額は、使わなくても発生します。準備が整う前に申し込むと、CSVを1回も落とさないまま月額だけが積み上がります。
先に決めておくことは3つです。Shopifyのストアを作る日、CSVの列を対応づける担当、テスト取り込みを行う日です。
この3つが決まってから申し込むと、申込から書き出しまでを同じ月に収めやすくなります。
最後の入金がいつになるかを退店前に数える
売上金の入金には締め日があります。締め日は10日と25日で、10日締めは毎月20日頃に振込額が開示され月末に振り込まれます。
25日締めは毎月5日頃に開示され、15日に振り込まれます。最後の入金がいつになるかはこの周期で決まるので、退店の日取りを決める前に直近の締め日と振込日を数えてください。
出店料の支払い方も確かめておきます。2回目以降の出店料は楽天銀行の自動振替で引き落とされるため、口座を閉じる順番にも注意が要ります。
出典:楽天市場公式のよくある質問の、売上入金サイクルと出店料の支払い方法についての回答。
よくある質問
楽天市場とShopifyを連携しながら両方運用できますか?
これから始める店舗には、その道が選べません。Shopify公式の楽天市場の販売チャネルは、アプリページを開いても導入画面に到達できないためです。
楽天市場の公式は外部サイトとの連携にRMSのオプション利用や別途費用・開発が必要になる場合があると案内しているので、続けたい場合はその見積もりから確認してください。
顧客データはそのままShopifyへ移せますか?
移せません。顧客の実際のメールアドレスは、出店している間も店舗の手元にないためです。
退店後は商品データも顧客データもすべて消去され、退店時の抽出も行われない、というのが契約における重要事項の記載です。
受注データのCSVをダウンロードするのに費用はかかりますか?
費用はかかりません。
楽天市場の料金詳細のページでは、CSVデータダウンロードサービスの欄が無料になっています。ただし出力されるメールアドレスはマスク化されたもので、自社ECの案内メールの宛先には使えません。
退店してからでも商品データは取り出せますか?
取り出せません。期限は退店日そのものです。
退店申請を出すと、退店日に利用中のサービスも自動で解約され、CSVを落とす機能が同時に使えなくなります。
商品データを移すのに追加の費用はかかりますか?
月額10,000円(税別)です。商品データをCSVで出し入れするRMS商品一括編集機能の、月額固定費にあたります。
申し込んだ後は利用の有無にかかわらず発生するので、作業の準備が整ってから申し込んでください。
途中で退店したら出店料は戻りますか?
戻りません。1年間の契約のため、途中退店の場合でも当初の契約期間の出店料の支払いは必要、というのが公式の回答です。
退店そのものは契約期間中でも可能で、売上が無くなれば売上に比例して引かれる手数料は発生しません。
楽天市場からShopifyへの移行にはどれくらいの期間がかかりますか?
作業日数の目安を示した公式の記載はありません。ただし、逆算しなければならない期限のほうは決まっています。
契約の更新を止める書面の連絡は契約期限の1ヶ月前まで、CSVを落とせるのは退店日まで、売上金の入金は10日締めと25日締めの周期なので、この3つから逆算して日程を組んでください。
楽天市場のURLから新しいサイトへリダイレクトできますか?
ShopifyのURLリダイレクトで転送元にできるのは、自分のストアのリンク切れURLだけです。楽天のドメインのURLは指定できません。
楽天市場側で301リダイレクトを設定できるかどうかは公式に明記がないため、検索の評価は引き継げない前提で計画してください。
Shopifyで楽天ペイを使えますか?
標準では使えません。Shopifyペイメントの日本の決済手段の一覧に、楽天ペイの記載がないためです。
SBペイメントサービスが提供する決済アプリで足す道はありますが、同社との契約に加えて、Shopifyペイメント以外で受け取る注文には外部サービスの取引手数料も加わります。
過去の注文履歴はShopifyへ持ち込めますか?
CSVでは持ち込めません。案内されている手段は、移行アプリとOrder API、Transaction APIの3つです。
取り込む順番も指定されていますが、楽天からの移行では顧客の段に入れるデータがないため、実際に入れるのは商品と過去の注文です。
画像が複数ある商品はCSVでどう書けばいいですか?
1つの欄に画像のURLを並べる形は使えません。
Shopify公式の商品CSVインポートの指示は、画像ごとに1つの行だけを使うこと。2枚目からは行を追加して同じHandleを貼り付け、その行に画像のURLを1つ入れます。
取り込んだら商品説明の文字が化けたときはどこを直せばいいですか?
疑う場所は文字コードです。Shopify公式のインポートでよくある問題は、商品説明に不自然な文字が出る原因をCSVがUTF-8になっていないことだと説明しています。
ファイルをテキストエディタで開いてUTF-8を指定し、保存し直してください。
楽天市場からShopifyへ移行するときのチェックリスト
楽天市場からShopifyへの移行は、ひとつの交換です。手数料が下がる代わりに、集客と顧客の連絡先を自分で作り直すことになります。作業の面で結果を分けるのは、退店が一方通行だと分かった上で順序を組めるかどうかです。
- いまの売上が楽天市場の検索から来ているか、店名の指名から来ているかを数える
- Shopifyのストアを作る日と、CSVを整える担当と、テスト取り込みの日を決める
- その3つが決まってからRMS商品一括編集機能を申し込む
- RMSから商品データのCSVを書き出し、無料の受注データのCSVも同じ時期に落とす
- UTF-8・LF・1行目が列ヘッダーの形に整え、オプションが3つを超える商品を洗い出す
- まず少数の商品だけをテスト取り込みする
- 価格と在庫と画像を確かめてから商品の全件を取り込み、過去の注文は移行アプリかAPIで入れる
- 顧客の連絡先は持ち出せないため、Shopify側で会員登録を新しく集める導線とメールの受け皿を作る
- 楽天市場のURLは転送できないものとして、新しいストアへの入口を別に用意する
- 取り込みの確認が終わってから、契約期限の1ヶ月前までに退店の書面連絡を出す
最初の一手は、受注データのCSVを落とすことです。無料で今すぐ試せて、手元にどこまでのデータがあるのかが1回で分かります。
そのうえで商品一括編集の申込と、少数の商品でのテスト取り込みまでを通してください。詰まる箇所が具体的に見えてから退店の日程を決めれば、順序を間違えずに済みます。
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